2012年03月22日

審判便覧(改訂第14版)(案)に対する意見募集の結果

審判便覧(改訂第14版)(案)に対する意見募集(パブリックコメント)に対する特許庁の回答が公表された。
http://www.jpo.go.jp/iken/shinpan_binran_kekka_14.htm

この前送ったコメントに対する特許庁の回答
通知すべきであった拒絶理由を発見した場合、通常は、審判請求時の補正又は審判請求後でかつ最後の拒絶理由通知に対する補正を却下した上で、拒絶査定が維持できない場合には拒絶理由を通知することとしております。

だから、その対応がおかしいと言っているんですが・・・。

「拒絶査定が維持できない場合には拒絶理由を通知することとしております。」って、拒絶査定が維持できないなら、その拒絶理由が 「拒絶査定前に通知すべきであったか否か」 に関わらず通知する必要があるでしょ。 じゃなきゃ特許査定になっちゃうから。

そもそも、審査基準には以下のように規定されている。

審査基準 第IX部 審査の進め方 第2節 6.2.3(2)
(2) 限定的減縮の補正がなされた発明について、第36条に規定する要件を満たしていないとき

限定的減縮の補正がなされた発明に関し、明細書、特許請求の範囲又は図面に依然として記載不備がある場合、又は補正により新たな記載不備が生じた場合は、第36条の規定の違反を理由に、第17条の2第6項及び第53条を適用し、補正を却下する(ただし、補正前から第36条違反の拒絶理由が存在していたにもかかわらず、それを通知していなかった場合は、第36条違反を理由に補正を却下してはならない。)。

つまり、36条関連の拒絶理由については、通知すべきであったのに通知していない拒絶理由で補正却下してはならないことを、特許庁自身が定めているのだ。 「特§163②→特§50→特§53①」(「決定をもってその補正を却下しなければならない」)に違反してまで!

また、これに関して、2004年に特許庁は以下のようにコメントしている。

(「審査の進め方」の改訂審査基準(案)に寄せられたご意見について
Q29. 36条の要件を満たさない瑕疵が生じた場合(第2節 6.2.3(2))
 第一パラグラフでは、「限定的減縮の補正がなされた発明に関し、36 条に規定する要件を満たさない瑕疵が生じた場合」の補正却下について記載されているが、「瑕疵が生じた場合」との表現からは、補正により新たに瑕疵が生じた場合のみが該当し、補正後の発明に依然として瑕疵がある場合の取り扱いが不明瞭であると思われる。従って、いずれの場合をも含めていただくために、「瑕疵がある場合」との表現への変更を検討していただくことを希望する。

A.
 ここでいう「瑕疵」とは、原則として、補正によって生じたもの、もしくは、すでに拒絶理由通知で指摘したにもかかわらず依然として残っているものを意味しています。 補正前から36条を満たさない瑕疵が存在していても、その点について拒絶理由を通知していなかった場合は、それを根拠に補正を却下することは「不意打ち」にあたり妥当ではありません。その場合は、再度、拒絶理由通知を通知します。なお、ご指摘を踏まえて、趣旨が明らかになるよう修文しました。

つまり、通知すべきであったのに通知していない拒絶理由で補正を却下することは「不意打ち」にあたり妥当ではありませんと、特許庁自身が明言してるのだ。

今回の特許庁の回答は、たとえ拒絶査定の理由が審判請求時の補正によりすべて解消している場合でも、拒絶査定前に通知すべきであったのに通知していない拒絶理由を探し出して補正を却下し、補正前の請求項に戻した上で、拒絶理由を一切通知することなく拒絶査定を維持していいと言っているに等しいのだから、上記の 『「不意打ち」にあたり妥当ではありません』 という特許庁のコメントと明らかに矛盾している。

特許法50条に 「・・・却下の決定をするときは、この限りでない」 と規定されている以上、法的には、補正を却下することは不意打ちとは言いがたい。 補正を却下して、請求項を補正前に戻した後で拒絶理由を通知せずに拒絶査定や棄却審決を行うことが不意打ちになる。 しかし補正却下した後で拒絶理由を通知しても、出願人はどうせまた同じ補正をしてくるだろうから、補正を却下せずに拒絶理由を通知しようというのが、上記の特許庁の立場なんだろうな。 ともかく、2004年の段階では、特許庁はまだ良心のかけらを持っていた。 36条の拒絶理由に限るっていうのが納得できないが。。 拒絶査定が維持できない場合にしか拒絶理由を通知しないとしている現在の審判運用は、良心を失っていると共に、特許法にも違反するんだよ。

まぁ、該当するケースをお持ちで審決取消訴訟をする人は、争点に加えてみてはいかがでしょうか。

拒絶理由を通知せずに補正却下することは違法とは言えない。補正却下後のもともとの請求項に対して拒絶理由を通知しないのが「特§159②」や「特§163②」の手続違背に問えるのではないかということです。

(** 2015/7/22 文章を修正**)
 
 
posted by Ichizo Sotoku at 08:00 | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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