2013年03月19日

審査基準改訂案検証:“実質同一” の発明が審査対象にならないことがあり得る?

「発明の単一性の要件」、「発明の特別な技術的特徴を変更する補正」の審査基準改訂案等に対する意見募集中 !! (特許庁)
http://www.jpo.go.jp/iken/shinsa_kaitei2536.htm
パブリックコメント提出期限:平成25年4月5日(金)

 
「 ある発明に対して周知技術、慣用技術を付加、削除、転換等をしたもので新たな効果を生まない発明 」 や 「 ある発明とカテゴリー表現上の違いしかない発明 」 などは、「 実質同一の発明 」 と呼ばれるが、こうした発明は、1つの出願でまとめて審査するのが効率的だと思われる。

これらの発明をまとめて審査するために、今回の審査基準改訂案には次の規定が設けられている。

第 I 部 第 2 章 3.1.2.2

 「 3.1.2.1 特別な技術的特徴に基づく審査対象の決定」において審査対象とした発明(以下「特別な技術的特徴に基づいて審査対象とした発明」という。)とまとめて審査を行うことが効率的である発明については、審査対象に加える。まとめて審査を行うことが効率的であるかどうかは、明細書等の記載、出願時の技術常識及び先行技術調査の観点などを総合的に考慮して判断する。

 例えば、下記(1)又は(2)に該当する発明は、特別な技術的特徴に基づいて審査対象とした発明とまとめて審査を行うことが効率的である発明として、審査対象に加える。

 
そして、実質同一的な発明を審査対象に組み入れることについては (2) に以下のように記載されている。

(2) 特別な技術的特徴に基づいて審査対象とした発明について審査を行った結果、実質的に追加的な先行技術調査や判断を必要とすることなく審査を行うことが可能である発明。
 例えば、以下の(i)〜(v)のいずれかに該当する発明は、通常、実質的に追加的な先行技術調査や判断を必要とすることなく審査を行うことが可能である発明である。
(i) 特別な技術的特徴に基づいて審査対象とした発明と表現上の差異があるだけの他の発明。
(ii) 特別な技術的特徴に基づいて審査対象とした発明に対し、周知技術、慣用技術の付加、削除、転換等をした他の発明であって、新たな効果を奏するものではないもの。
(iii) 特別な技術的特徴に基づいて審査対象とした発明を審査した結果、その発明に新規性又は進歩性が無いことが判明した場合において、その発明を包含する広い概念の他の発明。
(iv) 特別な技術的特徴に基づいて審査対象とした発明を審査した結果、ある発明特定事項を有する点に新規性及び進歩性があることが判明した場合において、その発明特定事項を含む他の発明。
(v) 特別な技術的特徴に基づいて審査対象とした発明との差異が「技術の具体的適用に伴う設計変更」又は「数値範囲の最適化又は好適化」である他の発明であって、当該差異が引用発明と比較した有利な効果を奏するものでもないことを容易に判断できるもの。

ところが・・・、上記に下線で示した通り、この規定は 「 特別な技術的特徴に基づいて審査対象とした発明 」 (すなわち 3.1.2.1 で審査対象になった発明 ) に関してしか適用されない。

したがって、 3.1.2.2 (1) の規定に基づいて審査対象となった発明については、追加的な先行技術調査や判断が実質上必要ない発明が他に存在しているとしても、審査対象とはならない可能性がある。

もちろん、その発明が、請求項 1 と課題や技術的関連性が低くない発明であれば、初めから 3.1.2.2 (1) に基づいて審査対象となるはずであるが、 3.1.2.2 (1) で審査対象となるのは、 「 請求項 1 の全ての発明特定事項を含む同一カテゴリーの発明 」 だけだ。 また、 「 関連性が低い 」 かどうかの判断基準が曖昧なのはここここで投稿した通りだ。

そして、3.1.2.2 (1) で審査対象となった発明と密接に関連するが、請求項 1 とはカテゴリーが異なる発明が審査対象に組み入れられるかどうかについては、審査基準案には明確な規定はない。 したがって、仮に 3.1.2.2 (1) の規定に基づいて審査対象となった発明が許可されることがあるとしても、カテゴリーの違う “実質同一” 的な発明を一緒に許可することが拒否されてしまうこともないとは言えないかも知れない。

ところが、その発明を分割出願しても、39 条 2 項で拒絶される可能性があるから、安心して分割出願することはできない。 したがって、実質同一的な発明が審査対象にならなかった場合、出願人は、元となる発明の権利化を本願ではあきらめて分割出願で仕切りなおすか、あるいは実質同一の発明の権利化を永久にあきらめるしかないという、非常に非効率な状況に陥ってしまうかも知れない。

 

posted by Ichizo Sotoku at 06:00 | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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