2014年08月20日

複数回の延長をした場合、重複した部分の延長期間はどうなる? (特許権 存続期間 延長登録 の審査運用問題11)


 前回の投稿で、複数回の延長を行う場合に、先の処分で延長された特許権の効力と重複する部分を再度延長したらどうなるのかについて少し話題にしたけれど、先行処分で延長されている特許権の範囲と重複するところが再度延長される場合、ちょっと困った問題が発生する。 重複する範囲の延長期間は、先の延長の期間とするべきなのか、後の延長の期間とするべきなのか、一概に決めることができないからだ (下図)。 両方の延長が有効である以上、どちらか一方の延長期間内である限りは、特許権の効力が及ぶことになるから、重複する範囲の延長期間は “長い方” ということになるだろう。

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 この点、大合議判決(平成25年(行ケ)10195〜10198)は、以下のように判示している。

 平成25年(行ケ)10195平成25年(行ケ)10198
なお,政令で定める処分を受けることによって禁止が解除された特許発明の実施が,先行処分に基づき存続期間が延長された当該特許権の効力が及ぶ特許発明の実施の範囲に含まれるような場合は,重複して延長の効果が生じ得ることとなる。後行処分による延長期間が先行処分による延長期間より長い場合には,これに対応する期間,当該特許権の存続期間が延長されるが,当該期間については,当該特許発明の実施が禁止されていた部分があることに照らすと,上記のように解することに何ら不合理な点はない。

 この判示は、2回目の処分で延長される特許権には “幅” がないということが前提とされているように見える。 確かに、後の処分で承認された医薬品そのものに対する特許権の延長期間に関しては、後の処分期間だけ実施できなかったのは事実なのだから、先の処分期間ではなく、後の処分期間だけ延長されることが合理的だということになるだろう (下図)。

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 しかし、最初の処分で延長される特許権に “幅” があるのなら、後の処分で延長される特許権にも “幅” はあると考える方が公平だし、その場合、後の処分で承認された医薬品そのものの延長期間は後の処分期間でいいとしても、それ以外の重複部分は、延長期間をどうするのかは、自明な問題とは言えないことになる。 大合議判決は 「何ら不合理な点はない」 と言っているけれど、ちょっと困った事態ではありますな。 まあ、ものすごく重大な問題とまでは思われないし、“極めて長期” になることもないのは確かだが・・・。

 特許庁が、先行処分で延長した特許権の効力が及ぶ範囲と重複するような延長登録出願は認めないという立場を、旧審査基準から現在の審査基準に至るまで一貫して取り続けているのは、こういう事態を避けるためでもあるんでしょうな。。 

 私としては、そもそも延長される特許権の効力は、承認された医薬品そのものにしか及ばず、延長される特許権の効力範囲に “幅” なんてないという考えだから、その考えに基づく限りは、この問題は解決できそうな気がするけれど、それについては、そのうちまとめて説明したいと思う。


posted by Ichizo Sotoku at 08:00 | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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