Sotoku, 通号 1 号, 1-34, 2014 (published online on 29-10-2014)
タイトル: 特許権の存続期間の時計が止まるとき
−特許権の存続期間の延長制度のあり方−
著者: 想特 一三 (Sotoku Ichizo)
[要旨]
医薬品の承認手続に伴う特許権の存続期間の侵食を合理的に回復させようとする限り、@ 医薬品の承認を受けたのが特許権者ではなく第三者であっても、その承認に基づいて特許権の存続期間は延長されうるものだと考えること、および、A 承認を受けるための試験を行った期間が特許登録前であっても、その期間を回復すること、の二点は、本来必要であるにもかかわらず、現在の特許法はこれらに十分に対応していない。 最近の裁判所の判決では、薬事法の処分により実施することができるようになるとみなされる特許発明の範囲、および特許権が延長されたときに、延長された特許権の効力が及ぶ範囲は、ともに「承認された医薬品そのもの」と実質的に同じものか、それと大差ないものであるという解釈が示されており、このままでは現在の法制度が抱える問題が顕在化するおそれがある。 延長制度を合理的かつ意味のあるものとするためには、特許権の存続期間が侵食されるのはいつなのかを改めて考えるとともに、侵食された権利を正当に回復させる法制度を実現することが望まれる。
***** 2015/04/09 追加
本稿の21ページ左欄で下記の記載について:
そして、改変医薬品そのものの承認期間が、万一、先発医薬品の承認期間よりも長かった場合は、改変医薬品の承認期間に基づいて延長登録を行うことにより、改変医薬品に対する延長期間を先発医薬品の延長期間よりも延ばすことができる。
これについては、改変医薬品の承認期間中にも特許権者は、先発医薬品を販売することにより利益を得られることもあるので、それを考慮して再考されるべきと考えている (特許の期間延長の条件は“利益がなかった”ことである」 を参照)。
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