2015年07月24日

祝 : 「発明の単一性」 の審査基準の再改訂 (審査基準改訂案A)


今から2年前、 「請求項1に新規性がない場合、あらゆる補正は単一性要件を満たさないのか?」 と題する投稿をした。

長年にわたって特許庁は、請求項1に新規性がない場合は、たとえその後でどのように請求項を補正しようが、単一性要件違反の拒絶理由を解消することは原理的に不可能だというスタンスをとってきた。 それを示しているのが、現在の審査基準 第I部 第2章 3.1.1 「基本的な考え方」 の以下の記載だ。

現在の審査基準 第I部 第2章 3.1.1 「基本的な考え方」

・・・。一方、特許請求の範囲の最初に記載された発明が特別な技術的特徴を有しない場合、その他の全ての発明は、発明の単一性の要件を満たすとはいえない
 ただし、第37条が出願人等の便宜を図る趣旨の規定であることに鑑み、上記の発明の単一性の要件を満たす発明のほか、一定の要件を満たす発明については、審査対象とする。審査対象の決定は、後述する「3.1.2具体的な手順」に従う。

もちろん、請求項1に新規性がない場合でも、補正の仕方によっては単一性要件の拒絶理由は解消するが、それは特許庁的には、本当は単一性要件の拒絶理由は解消しないのだが、それでは余りに出願人に酷であることから 「例外的」 に拒絶理由が解消したものとして取り扱うということなのであり、いわば特許庁のお慈悲に頼らなければ単一性要件の拒絶理由を解消することはできなかったのだ。 しかし、そのような考え方をとっている国は日本だけであり、上記の投稿で書いた通り批判も強かった。

これについて私は、先の審査基準の改訂の際に、以下のようなパブリックコメントを特許庁に送った。

 (審査基準改訂案に対するパブリックコメント及び特許庁の回答)
単一性 _kangae.png

詳細は以下の特許庁のウェブサイトを参照。

『「発明の単一性の要件」、「発明の特別な技術的特徴を変更する補正」等の審査基準改訂案に対する意見募集の結果について』
http://www.jpo.go.jp/iken/shinsa_kaitei2536_kekka.htm

上記の回答の通り、その時は何も変わらなかった。 しかしそれから2年が経ち、今回公表された審査基準改訂案を見てみると、この記載は削除されており、違う文章になっていた (以下)。

 審査基準改訂案 第II部 第3章 2.

(説明)
 特許請求の範囲に記載された全ての発明が発明の単一性の要件を満たす一群の発明に該当しない場合は、本来であれば、その特許出願は、第37条の要件を満たさない。その場合は、審査官は、発明の単一性の要件を満たす一群の発明のみを審査対象とし、他の発明を審査対象とすることを要しない。
 しかし、第37条が出願人等の便宜を図る趣旨の規定であることに鑑みて、発明の単一性の要件を満たす一群の発明のほか、一定の要件を満たす発明については、審査官は、審査対象とする。そして、審査官は、審査対象とならない発明がある場合にのみ、特許出願が第37条の要件を満たさないものと判断する。

やや微妙な記載にはなっているものの、少なくとも、請求項1に新規性がない場合、その後、どのように補正しようが単一性は満たさないというスタンスをとるのは止めたようだ。 これで請求項1に新規性がない場合でも出願人は、特許庁のお慈悲に頼らなくても単一性要件の拒絶理由を解消する補正ができるようになった。

よかったね。

*      *      *


もう1つ、2年前に投稿した 「審査基準改訂案検証:“実質同一” の発明が審査対象にならないことがあり得る?」 で話題にした問題に関しても、今回の改訂で修正されるようだ。

 現在の審査基準 第I部 第2章 3.1.2.2 (2)
tannitusei_1.png

これについて私は、先の審査基準の改訂の際に、以下のようなパブリックコメントを特許庁に送った。

 (審査基準改訂案に対するパブリックコメント及び特許庁の回答
tannitusei_kangae-3.png

上記の回答の通り、その時は何も変わらなかったが、今回の改訂案。
  ↓
 今回の改訂案 第II部 第3章 4.2(2)
tannitusei_2.png


今回の改訂で修正されることは喜ばしい。 しかしこれらの例から分かる通り、たとえ修正すべき事項をパブリックコメントで指摘しても、実質的な部分がその場で修正された試しがない。 修正されるのは常に軽微な修正だけで、実質的な部分は、たとえ不備があっても、そのまま審査基準の運用が開始されてしまう。

それは、パブリックコメントを受けてワーキンググループ内で審査基準を再検討する仕組みがないことも一因だろう。 パブリックコメントの募集が済んだ後でワーキンググループを開催することが求められるのではないか。


posted by Ichizo Sotoku at 08:00 | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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