2016年01月21日

動き出すか医薬品特許期間延長の制度改革(第8回審査基準専門委員会ワーキンググループ)


平成28年1月13日に開催された 「産業構造審議会 知的財産分科会 特許制度小委員会 第8回 審査基準専門委員会ワーキンググループ」 では、「特許権の存続期間の延長登録出願に関する審査基準の点検・改訂について」 という議題が組まれており、特許庁事務局から審査基準の改訂について説明が行われ、議論がなされたようだ (議事録が公開されていないので、詳細は分からない)。

今回の会議で、特許庁が何か驚くような案を提案をしたら面白いと思っていたけれど、公開された配布資料の 「資料3」 を見る限りは、あまり想定外な提案はなかったようで、最高裁判決 (平成26年(行ヒ)356号) から多くの人が予想するような提案を行ったようだ。 すなわち、基本的にほとんどの承認で毎回延長できるというもの。 延長された特許権の効力範囲をどうするのかということについては、公開された資料中では何も触れられていない。

これに対して、日本製薬工業協会 (製薬協) の知的財産委員会は、今回の会議において 「審査基準改訂案および期間延長制度に対する意見書」 (配布資料の「宮内委員御提出資料(PDF:127KB)」) という書類を提出したようで、そこには、今回特許庁が提案した審査基準改訂の方向性について、次のようにコメントされている。

[日本製薬工業協会が提出した意見書]
・・・。 なお、今回の審査基準改訂案は、・・・、製薬協にとって到底満足できるものとはいえない。 従来とは全く考え方の異なる審査基準であり、法改正もなく、このように大きな運用変更が行われると、先に述べたとおり多くの弊害が発生することが予想される。 新薬の研究開発の促進、国内製薬産業の発展のために導入された延長制度であるが、もはや製薬産業の発展に貢献するとは言い難い状況となる。 そして、このような状況が生じるのは現行法の規定に課題があると結論せざるを得ない。
・・・。
そこで、製薬協知財委員会は、現行法の課題を修正するため、関係諸団体および行政機関が連携して、直ちに法改正に着手することを要望する

なんか、怒っているみたい。

しかし、そもそも初回承認の後でまた承認を受けて、再延長を目指して延長登録出願を行い、裁判を起こして特許延長を主張したのは先発医薬品メーカーの方々だ。 今回の最高裁判決により、晴れて延長が認められたのに、新薬開発のためにならない、とか、製薬産業の発展に貢献するとは言い難いと言うのは、何かおかしい気もしてしまう。

私も、今の特許法では、問題点を根本的に解決できる延長制度を作ることはできそうにないので、法改正をすることには賛成だけど、昨年11月19日の投稿 (「最高裁判決平成26年(行ヒ)356号で医薬品特許権延長問題はふりだしに戻る」) でも書いた通り、今のところ、学説が納得のいくものになっていないので、今すぐに法改正してもいい法律ができる気がしない。 製薬協に引きずられて変な制度になってもよくないし。。

*     *     *

医薬品の特許延長の問題に関する私の考えは、昨年6月30日の 「最高裁判決平成21年(行ヒ)324〜326号が掛けた謎」 (Sotoku 5号) で書いたので、これから言うことも、基本的にはその繰り返しになるけれど、今回のワーキンググループで特許庁が示した 「資料3」 をネタにしてもう一度書いてみる。

1. 特許登録前の期間も回復できる制度にするべき

「資料3」 の2ページは以下のような図になっている。 特許期間の延長は、基本的には 「治験届出日」 から 「製造承認日」 までの期間と同じだけ延長できることになっている (但し最長5年)。 但し下の図にある通り、「治験届出日」 が 「特許登録日」 よりも前である場合は、「特許登録日」 から 「製造承認日」 までの期間だけが延長できる。 すなわち、いち早く医薬品を販売するために、まだ特許になる前に、医薬品の治験届を薬事当局に提出して、医薬品の臨床試験を開始した場合は、短い期間しか延長できないという制度になっている。 これは、特許登録前の期間は 「出願中の期間」 であって 「特許期間」 ではないからだ。 『 特許登録前は、「特許期間」 ではないのだから、特許期間が侵食されるのは特許登録後だけ。 だから、特許登録前の期間は延長しなくていい。』 というのが、現在の日本の特許法の規定だし、米国の延長制度もそうなっている。 だから、特許登録前の期間は延長しなくていいということはほとんど問題視されていない。

[資料3の2ページ]
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しかし、本当にそうなのか? 特許登録前だろうが、登録後だろうが、もしその医薬品をすぐに製造販売できれば、その医薬品について独占的に利益を上げられる期間であることに変わりはない。 その期間に医薬品を販売できなければ、利益が上げられないまま 「出願から20年」 という独占期間の時間がどんどん経過してしまうのだ。 つまり、特許登録前だろうが、登録後だろうが、「出願から20年」 という期間が短くなってしまうという問題は同じなのだ。 だから特許登録前であっても、その期間も延長すべきだ (下図の赤字)。

8wg02.png

もちろん、特許登録前の期間は 「特許期間」 ではないから、特許期間が延長されるのは、厳密にはおかしい。 だから、「特許期間」 を延長するのではなく、「特許前の期間」 (すなわち、「出願中」 の期間) を延長するのが厳密には正しい (下図)。

Sotoku01-20141029_20150520_.png
    Sotoku, 通号1号,1-34 (2014) より
   [特許登録前の実施できなかった期間も延長されるのが正しい]

昨年5月22日の投稿でも書いたけれど、特許権者が、初回承認ではなく、改変医薬品の後行承認でも特許を延長できるようにしたいと思う理由の1つは、初回承認の臨床試験を特許登録前に開始した場合、現在の延長制度では、その期間は延長することができないので、初回承認による延長では、不十分な延長しかできないことだ。 そうすると、特許権者には不満が残るので、改変医薬品の承認を受けて、再びもっと長い期間特許を延長したいという気持ちが生じてしまう。 もし初回承認において、特許登録前の期間まで含めて十分に延長できるようにして、かつ、延長した特許権の効力範囲を、改変医薬品を含む程度広く設定すれば、再延長をさせる必要はなくなるんだよ。

つまり、特許登録前の失われた期間を回復できない現在の制度には不備がある。 法改正するのなら、この問題に取り組めばいいと思う。

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2. 「包含」 の理解の誤り

「資料3」 の11ページには、先行承認 (先行処分) と今回の承認 (本件処分) が一部重複していたり、包含関係にある場合は、重なっている部分については再延長を認めないことにしよう、ということが書いてある (下図)。

[資料3の11ページ]
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上の図で赤枠で囲った部分には次のように記載されている。

最高裁判決では、先行処分の対象となった医薬品の製造販売が、出願理由処分の対象となった医薬品の製造販売を包含すると認められるときは、延長登録出願に係る特許発明の実施に本件処分を受けることが必要であったとは認められない、と判示された。

確かに、最高裁判決 (平成26年(行ヒ)第356号) ではそのように判示されている。 そして 「資料3」 の17ページには、この場合に相当すると言いだけな事例が記載されており、先行処分は 「効能・効果」 が 「胃癌」 全体にわたって承認されており、本件処分で 「α遺伝子陽性の胃癌」 に対して承認された場合は、本件処分の延長は拒絶するという案になっている。

[資料3の17ページ]
8wg04.png

この事例は、イレッサ®の一部変更承認に基づく延長登録出願と同じケースであって、イレッサの裁判事件 (平成25年(行ケ)10326; 平成25年(行ケ)10327) でも、知財高裁は、本件処分は先行処分に包含されているというような理由で延長を認めなかった。 

しかし上記の 「資料3の17ページ」 の事例において、本件処分は本当に先行処分に包含されているのか? そもそも、もし本件処分は先行処分に包含されており、本件処分を受けなくても本件医薬品を実施できたのなら、なんで本件処分を受ける必要があるのだ? 本件処分が先行処分のうちに入っているのなら、わざわざ本件処分を受ける必要はないじゃん。 逆に言えば、「本件処分を受けた」 ということは、本件処分が必要だったからでしょう? それを考えれば、「資料3の17ページ」 の事例で、本件処分が先行処分に包含されているように図示されているのは、何かが間違っていると気づくべきだろう。

先行処分の医薬品の効能効果は 「胃癌」 であり、本件処分の医薬品の効能効果は 「α遺伝子陽性の胃癌」 だから、確かに、本件処分の医薬品の効能効果は、先行処分の医薬品の効能効果に包含されている (下図)。 だから、先行処分の医薬品を 「α遺伝子陽性の胃癌」 の患者に使用することも可能だ。

[承認された医薬品の “使用対象 (効能・効果)” の関係]
8wg05_2.png

しかし、医薬品の使用場面の包含関係は、処分の包含関係とは違う。 薬機法 (旧薬事法) が製薬メーカーに対して行う処分とは、医薬品の使用を許可するために行うのではなく、医薬品の製造販売を許可するために行うものだ (下図)。

 [薬機法 (旧薬事法) 14条]
yakujihou14.png

つまり、先行医薬品を 「α遺伝子陽性の胃癌」 に使用することが先行処分において可能となっていたか否かは関係がない。 判断すべきなのは、「“胃癌” 全体向けの医薬品」 として製造販売することが承認された場合に、新たに承認を受けなくても 「“α遺伝子陽性の胃癌” 向けに特定した医薬品」 を製造販売できるか否かなのだ。 そして、通常、これはできない。 なぜなら、“胃癌” 全体として効果があるということしか調べられていない場合に、“α遺伝子陽性の胃癌” に対して効果があるか否かは分からないからだ。 ひょっとすると、その医薬品は、“α遺伝子陰性の胃癌” にしか効果がないかも知れない。 たとえその医薬品が、“α遺伝子陰性の胃癌” にしか効果がないとしても、“胃癌” 患者全体に使用すれば、統計的に効果は出るから。 α遺伝子陽性の胃癌患者には効かないけど、α遺伝子陰性の胃癌患者には効くから、全体として統計を取れば効果が出る。 だから、“胃癌” 全体向けの医薬品としては承認されうる。 しかし、その医薬品は “α遺伝子陽性の胃癌” に効くという保障はないのだから、“胃癌” 全体向けの医薬品として製造販売が承認されているからといって、「“α遺伝子陽性の胃癌” 向けに特定した医薬品」 を勝手に製造販売することはできない。

実際、イレッサでは、初回承認では 「手術不能または再発非小細胞肺癌」 患者に対する医薬品の製造販売承認が行われたが、その後、実はイレッサは、その患者群全体に効くわけじゃなくて、その患者群のうちで、「EGFR遺伝子変異陽性の手術不能または再発非小細胞肺癌」 にしか効果がないことが判明したので、次の承認において 「EGFR遺伝子変異陽性の手術不能または再発非小細胞肺癌」 に適用対象 (「効能・効果」の項目) が縮小された。 つまりイレッサは、「手術不能または再発非小細胞肺癌」 に対して医薬品の製造販売が承認されていたけれど、実は 「EGFR遺伝子が正常の手術不能または再発非小細胞肺癌」 には効果がなかったわけだ。 もちろん、初めからそういうことが分かっていたか、予想されたのなら、そういう承認はされなかっただろうけれど、予想できなかったのだから仕方がない。 医薬品の承認というのは、一定の患者集団に統計的に効果があれば承認されうるのであって、奏効率が100%でもない限り、その患者集団のどんなサブタイプにも効くとは言えないのだ。

これと同じように、上記の 「資料3の17ページ」 の例において、たとえ “胃癌” 全体を対象とする医薬品の製造販売が承認されていても、“α遺伝子陽性の胃癌” に効果があるか否かは分からないから、“α遺伝子陽性の胃癌” に特定した医薬品を勝手に製造販売することは許されない。 その患者群で本当に効果があることを確かめて、新たに承認を受ける必要がある。 つまり、後行処分は先行処分に包含なんかされていないのだ。

[承認された医薬品の “製造販売” の関係]
8wg06_2_.png

医薬品の “製造販売” の承認という処分の包含関係は、医薬品の “使用場面” の包含関係とは違う。 最高裁は、「先行処分の対象となった医薬品の製造販売が、出願理由処分の対象となった医薬品の製造販売を包含すると認められるときは、延長登録出願に係る特許発明の実施に本件処分を受けることが必要であったとは認められない。」 と判示しただけで、「先行処分の対象となった医薬品の使用場面が、・・・」 と判示したわけじゃない。 特許庁が提示した 「資料3の17ページ」 の事例は、その点をごっちゃにしている点で非論理的なのだ。 同様に、イレッサの判決 (平成25年(行ケ)10326; 平成25年(行ケ)10327) で知財高裁が判示した判決理由も、特許庁と同じ間違った解釈をしている点で非論理的だ。 それについては、2015年3月13日の私の投稿 「イレッサの一変承認は特許延長の拒絶要件に該当しない」 (Sotoku 通号2号) で既に書いた。

なお、先行処分において、胃癌と肝臓癌で、それぞれ臨床試験を行って、両方に効果があることが確認された上で 「胃癌または肝臓癌」 として承認された場合に、それを 「胃癌」 だけで販売するというのなら、さらなる処分は不要だと言えるかも知れない。 なぜなら、先行処分において 「胃癌」 だけでも効果があることが臨床試験で確認されているからだ。 でもイレッサの事例や、特許庁が提示した 「資料3の17ページ」 の事例は、そういう場合とは違う。 それに、もし新たな承認が不要なら、実際の厚労省の審査でも新たな臨床試験は求められないはずなのだから、承認が必要なのか不要なのかは、厚労省の審査実態で判断すべきだろう。

もちろん私は、イレッサのようなケースで、後行処分があった場合に再延長を認めるべきだとは思っていない。 だけど上記の通り、イレッサの裁判で知財高裁が行った理由付けや、上記の 「資料3の17ページ」 で特許庁が行っている解釈は間違いであって、現在の特許法では、イレッサのようなケースで後行処分があった場合に再延長を阻止することはできない。 知財高裁も特許庁も、再延長を阻止したいという結論が先にあって、その結論を導くために、「処分」 の包含関係を無理に解釈しているんだと思う。 現行法のもとで延長を阻止するには、そういう解釈をするしかないとも言えるけど。。

イレッサのようなケースで、後行処分があった場合に再延長を認めるべきではないのは、本件処分が先行処分に包含されているからではなく、先行医薬品を販売している者と後行医薬品を販売する者が同一であって、かつ、後行医薬品は、先行医薬品で代替できるからだ。 上記の通り、先行医薬品の 「効能・効果」(手術不能または再発非小細胞肺癌) は、後行医薬品の 「効能・効果」(EGFR遺伝子変異陽性の手術不能または再発非小細胞肺癌) を包含するから、たとえ後行医薬品が販売されていなくても、後行医薬品に対する需要は、先行医薬品で代替することができた。 実際、後行医薬品の承認が行われる前から、イレッサがEGFR遺伝子変異陽性患者にしか効かないことは医療現場において知られていて、EGFR遺伝子変異陽性患者にしか使われていなかった。 つまり、特許権者は本件医薬品に相当する発明の実施 (EGFR遺伝子変異陽性に特定された医薬品の製造販売) をできていたのではなく、それを代替できる先行医薬品を実施 (製造販売) できていたから延長する必要がないということ。

特許延長制度において 「市場代替性」 が重要な意味を持つことについては、一部の学者も指摘している (詳しくは、2015年11月19日の投稿 「最高裁判決平成26年(行ヒ)356号で医薬品特許権延長問題はふりだしに戻る」 を参照)。

同様のことは、適用場面が完全に重複や包含されていない場合にも当てはまる。 例えば先行処分はある薬剤を 「3日ごとに30mg」 として承認されたけれど、より副作用を低減するために、後行処分で 「2日ごとに20mg」 に変更されて、それ以降は、その医薬品はみんな 「2日ごとに20mg」 で使われるようになった場合、旧医薬品と新医薬品は 「用法・用量」 が違うから適用場面は厳密には重複していない。 でも、先行医薬品を使っていた患者は、みんな後行医薬品に移行するのだから、2つの医薬品はほぼ完全な代替性があるわけだ。 こういう場合に、先行処分より後行処分の方が長くかかったからって、特許を再延長させるのはおかしいでしょう? 先行処分で3年延長したのなら、後行処分で4年かかろうが、2年かかろうが、延長期間は3年にそろえるべきだろう。

先行処分の医薬品の錠剤が、含まれている成分の関係で、保存中に微妙に変質することが判明して、成分を変更して後行処分を受けた場合なんかも同様で、先行処分より後行処分の方が長くかかったからって、特許を再延長させるのはおかしい。 もちろん、後行処分の方が短かったからといって、特許期間が短くなるのもおかしい。

上記の例は、後行処分を受けて、先行医薬品から後行医薬品に販売が切り替わる場合だけど、たとえ先行医薬品が販売され続ける場合であっても、先行医薬品のシェアのかなりが後行医薬品に移行するような場合は、後行処分の期間だけ特許を延長させるのはフェアじゃない。 なぜなら後行処分を受ける間、特許権者は先行医薬品のシェア低下をまぬがれるという利益を受けていたのだから、後行処分を受けるために後行医薬品を販売できなかった不利益は、先行医薬品の販売により補われていたからだ。

このように、延長を防ぐ決め手は 「代替性」 だ。 「処分の包含関係」 という理屈では不要な延長を防ぐことはできない。 今回特許庁が提示した 「資料3の17ページ」 のような詭弁を使わなくても再延長を阻止できるようにするためにこそ、市場代替性に基づいて延長を阻止できるような新たな法整備が求められる。

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3. 先行医薬品を含まない特許だからといって延長してよいわけではない

 [資料3の8ページ]
8wg_3-8.png

上の資料の右下の赤丸で囲ったところに、5年前の最高裁判決 (平成21年(行ヒ)326号;パシーフカプセル30mg事件) の判決文が引用されており、「延長しようとしている特許の範囲内に先行医薬品が含まれない場合は、延長を拒絶できない」 という趣旨のことが書いてある。

しかし、上記の 「2.」 で言った通り、再延長を認めてよいのか否かは、「その特許権者が、市場代替性のある先行医薬品を独占的に販売できたのか否か」 ということが重要なのであって、延長しようとしている特許の範囲内に、先行医薬品が含まれているか否かは関係がない。 たとえ、延長しようとしている特許の範囲内に先行医薬品が含まれなくても、その先行医薬品と、後行医薬品とが、高い市場代替性があり、後行処分を受けようとする間も、先行医薬品を独占販売することで利益を補完しえたとみなせる限りは、後行処分で延長を認める必要はないのだ。

この点は、2015年3月19日の投稿 「特許の期間延長の条件は“利益がなかった”ことである」 (Sotoku, 通号3号) や、2015年6月30日の投稿 「最高裁判決平成21年(行ヒ)324〜326号が掛けた謎」 (Sotoku, 通号5号) で詳しく書いた。

パシーフカプセル30mg事件 (平成21年(行ヒ)326号) における最高裁の判示は、「延長しようとしている特許の範囲内に先行医薬品が含まれない場合は延長を認めることが、延長制度の趣旨からして妥当だ」 と言う判示だと理解するよりは、「延長しようとしている特許の範囲内に先行医薬品が含まれない場合に延長を拒絶することは、良くも悪くも現在の特許法のもとではできない」 という判示だと理解する方がいいと思う。

2015年6月19日の投稿 「審査基準を利用して特許の多重延長を目指す先発メーカーたち」 で書いたように、この最高裁判決に基づいて先発医薬品メーカーたちは、分割出願を利用して、本来は延長が認められないような類似医薬品の承認で、特許を延長しようと考えている。 それ以外にも、ちょっとした製剤方法の改良や、成分の改変などで特許を取得し、先行医薬品を独占販売しつつ後行処分を受け、その間は大して不利益を被っていないのに、それらの特許を延長し、医薬品の独占状態を長引かせようとする。

自由な市場で行われるフェアな競争なら、文句を言われる筋合いはないかも知れない。 でも延長制度や薬事制度の隙間を突くようなやり方を放置するべきじゃない。 こういう延長に特許制度が手を貸すことを防ぐためにも、法改正をする必要があるということだ。 もちろん、「1.」で書いた通り、初回承認で十分に延長できるようにすることも同時に実現する必要がある。 それが実現できれば、似たような医薬品の承認で何回も延長されることは基本的になくなるのだから、後発者に対する予測性も確保できるだろう。

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以上、今回のワーキンググループで特許庁が示した 「資料3」 について、おかしいと思うところを指摘しつつ、法改正との関連について書いてみた。 今回書いたことは、先発メーカーにとっていい話も悪い話もあるけれど、全体としては、まぁ、先発メーカーにとっても受け入れられる話なのではないか。


posted by Ichizo Sotoku at 08:00 | TrackBack(1) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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